銀行融資専門家から見た日本不動産市場
約6年前、縁あって東京の銀行で勤務する機会を得て以来、海外資金が継続的に日本の不動産市場へ流入する様子を現場で見てきた。多くの人々が依然として「バブル崩壊」のイメージを持つ一方で、海外ではすでに一部の投資家が、日本不動産の魅力にいち早く気づいていた。すなわち、安定した賃料収益と比較的高い利回り、そして世界の主要都市と比べて割安な価格水準である。
加えて当時の日本は、「失われた30年」からの回復局面にあり、外部資本の流入を必要としていた。円安の進行や、外国人による不動産投資に対する規制の緩和、さらに仲介・売買登記・物件管理といった制度の透明性と整備状況が評価され、国際資金の流入は加速した。その結果、東京の不動産価格は2013年から2020年にかけて顕著な上昇局面を迎えた。
外国人による不動産保有比率も、2012年時点では約10%にとどまっていたが、現在では20%を超える水準に達している。主な投資主体は中国、香港、台湾、シンガポールといった華人圏の投資家であり、多くが売却による利益確定や、資産の組み替えを通じて再投資を行っている。
銀行の現場では、こうした多様な投資家と日々向き合うことになる。本稿では、日本の銀行システムや金融環境の特徴を踏まえつつ、どのように適切な銀行を選び、理想的な融資条件を引き出すかについて概説する。
日本融資の第一歩:適切な投資スキームの選択
銀行融資は極めてローカル性の高いサービスである。日本は銀行数が非常に多く、郵便局(ゆうちょ銀行)を含めると、世界でも有数の銀行密度を持つ国といえる。日本の金融機関は主に、全国展開する都市銀行(メガバンク:三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行)に加え、再編を経て誕生した新生銀行やあおぞら銀行、さらに地方銀行、信用金庫、信託銀行、外資系銀行、新興銀行など多様なプレイヤーで構成されている。
融資は「パートナー探し」にも似ており、自身の条件と銀行側の方針が合致するかどうかが重要となる。日本の銀行はそれぞれ明確な顧客ターゲットや業務領域を持っており、台湾のように各銀行が幅広い業務を横断的に扱うスタイルとは異なる。
そのため、日本で融資を受ける際の第一歩は「適切な銀行選び」にある。どの銀行がどの投資家層・スキームに対応しているかを見極めることが、融資成功の鍵となる。
また、日本は東アジアを代表する金融センターであり、原則として外為規制はないものの、銀行文化は依然として保守的である。多くの金融機関は外国人投資家に対する信用調査のノウハウが十分でないため、外国人向け融資には慎重、あるいは対応しないケースも少なくない。 このような背景から、日本での不動産投資においては、投資スキームの設計と銀行選定を初期段階で適切に行うことが、極めて重要なプロセスとなる。
日本においては、投資家の属性や投資スキームによって、適した金融機関が異なる。以下は代表的なパターン別の融資先の整理である。
(一)大型投資案件:日本投資会社を設立(TK/GK/TMKスキーム)
主な金融機関:
三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行、新生銀行、東京スター銀行、外資系銀行
ポイント:
① 立地が良く、実績のあるファンドであれば、メガバンクから大規模かつ低コストの融資を受けられる可能性が高い。
② 案件が複雑、または都心以外の立地の場合は、ドイツ銀行(DB)、バンク・オブ・アメリカ(BOA)、クレディ・アグリコルなどの外資系銀行や、新生銀行・東京スター銀行など比較的積極的な金融機関が対応するケースが多いが、融資コストは高くなる傾向がある。
(二)一般外国人投資家:日本投資会社(TK/GK/TMK)または株式会社を設立
主な金融機関:
三井住友信託銀行、新生銀行、東京スター銀行、オリックス銀行、外資系銀行
ポイント:
① 三井住友信託銀行は、自社仲介顧客に限定して融資するケースが多い。
② 株式会社の場合、日本の銀行は通常3期分の財務実績を重視する。
③ 台湾系銀行であれば、台湾本体の事業実績や代表者保証をもとに融資が可能な場合がある。
(三)一般外国人投資家:海外法人を設立
主な金融機関:
新生銀行、東京スター銀行、オリックス銀行、外資系銀行
ポイント:
台湾系銀行は台湾企業に対する信用調査が可能なため融資を受けやすいが、それ以外の国の法人では融資ハードルが高くなる傾向がある。
(四)一般外国人投資家(個人)
主な金融機関:
東京スター銀行、オリックス銀行、外資系銀行
ポイント:
日本の在留資格を持たない外国人に対して融資を行う銀行は限られており、東京スター銀行など一部にとどまる。加えて、台湾系銀行は台湾人向け住宅ローンを取り扱う数少ない選択肢となっている。
注記
1. 日本では外国人による不動産保有に制限はなく、投資家は自身の資金計画、税務、コスト構造に応じて最適なスキーム(上記①〜④)を選択できる。
2. TK/GK/TMKスキームは匿名組合型の投資構造であり、出資者情報の非開示や税制上のメリットがあるほか、銀行からノンリコースローン(非遡及型融資)を受けられるため、大型案件に適したスキームである。
3. 現在、日本には複数の台湾系銀行が進出しており、台湾銀行、中国信託銀行、第一銀行、兆豊銀行、彰化銀行、玉山銀行、台湾中小企業銀行などが住宅ローンを取り扱っている。ただし、多くは既存の台湾顧客を中心とした対応となっている。
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日本で不動産を購入する際、投資用・自宅用を問わず、事前に融資プランを整えておくことで、現在の低金利環境やレバレッジを活用することが可能となる。これにより、より良い物件の選択肢が広がるだけでなく、投資利回りの向上も期待できる。
一方で近年は、国際的な資金管理の規制強化に伴い、特にKYC(顧客確認・デューデリジェンス)に対する銀行の責任が大きくなっている。日本の金融機関では、資金の出所を明確に把握することがこれまで以上に求められている。
さらに、コロナ禍以降は各銀行のリスク管理も強化されており、不動産価格自体は大きく変動していないものの、新規融資の審査難易度は上昇している。 特に、これまで外国人投資家に比較的積極的だった銀行においても、国際的な資金背景が不透明なケースや、複雑な株主構成を持つ申請者に対しては、融資を見送る動きが目立っている。
そのため、日本での不動産投資を検討する際には、事前に融資のポイントを理解し、自身に適した投資スキームを構築することが重要である。専門の融資コンサルタントに相談し、最適なファイナンス戦略を設計することが、日本不動産投資を成功させる鍵となる。
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