台湾の主計総処による「2020年人口・住宅普査」では、台湾の住宅所有率は約8割に達している。一方、日本の「平成30年住宅・土地統計調査」によると、日本の住宅所有率は約6割にとどまり、東京都心ではさらに約4割程度とされている。 現在の日本の不動産市場を見ると、60歳以上では8割以上が持ち家を保有している一方、40歳以下の若年層では持ち家率は約4割にとどまっている。
なぜ日本の若者は住宅購入に積極的ではないのか、また住宅所有率が低い背景にはどのような構造的要因があるのか。本稿ではこれらの点について考察する。
目次
日本の若年層の持ち家率が低い主な要因
1. 日本企業による住宅手当
2. 「単身世代」:未婚化による住宅購入機会の減少
3. 不動産に対する価値観の違い
4. 日本不動産は中長期型の成熟投資であり、賃貸需要が高い
補足➤日本での不動産購入の基本プロセス
日本の若年層の持ち家率が低い主な要因
住宅購入志向の強い台湾と比較すると、日本人は「家を買わない」と感じられることもある。ここでは、日本の企業文化や社会背景、台湾との違いを踏まえ、なぜ日本の若年層が住宅購入を人生の優先事項としないのかを整理する。
1. 日本企業による住宅手当
日本企業は福利厚生が充実しており、「終身雇用制度」に加えて、賃貸住宅に住む従業員に対して家賃補助を支給するケースが一般的である。補助額は家賃の30〜50%程度に及ぶこともあり、居住コストの大きな軽減につながっている。 一方で、持ち家に対する同様の補助は基本的に存在しない。そのため、多くの若年層にとっては、長期の住宅ローンを背負うよりも、企業の補助を活用して賃貸住宅に住む方が、経済的にも柔軟性の面でも合理的な選択となっている。
2.「単身世代」:未婚化により住宅購入の契機が減少
日本の「2020年国勢調査」に基づく推計では、2040年には男性の生涯未婚率が約25%に達し、4人に1人が未婚となる見通しである。女性についても、およそ2割が生涯未婚になると予測されている。
従来は結婚や子育てが住宅購入の大きな契機とされてきたが、未婚化の進行によりその機会は減少している。さらに少子化の影響で世帯規模も縮小しており、単身世帯や未婚層が増加している。
こうした背景から、日本の未婚層・単身世帯は将来設計において、住宅購入よりも柔軟性と自由度の高い賃貸住宅を選択する傾向が強まっている。
3. 不動産に対する価値観の違い:日本人の住宅観
日本人の不動産に対する価値観の背景には、1990年代のバブル経済崩壊の経験がある。この経験を通じて、「不動産価格は必ず上昇するものではなく、下落する可能性もある」という認識が社会全体に強く根付いた。
一方、台湾では過去20年間、景気後退や住宅抑制政策が行われた局面においても、不動産価格は上昇傾向を維持してきた。そのため、多くの人々の間で不動産は「安定して値上がりし続ける資産」という投資観が形成されている。
しかし日本では、バブル期に高値で購入した層の中には、現在も住宅ローン残高が物件価値を上回る「含み損」を抱え続けているケースも少なくない。こうした経験が積み重なり、日本では不動産に対してより慎重で、相対的に消極的な価値観が形成されている。
4. 日本の不動産市場は中長期型の成熟投資市場であり、国内賃貸需要が高い
日本の住宅所有率は台湾と比較すると低い水準にあるが、その背景には大規模な賃貸需要の存在がある。また、日本では不動産を「短期的な転売で利益を得る商品」というよりも、「長期的に保有・利用する実物資産」として捉える考え方が主流である。
この点において、日本の不動産市場は他のアジアの華人圏都市と比べても、より成熟した市場構造を持っているといえる。バブル崩壊や東日本大震災などの経験を経て、国内不動産市場はかつての過熱状態から調整され、近年は徐々に安定した回復基調を見せている。
さらに、日本は政治・経済の安定性やインフラの整備水準が高く、加えて近年は円安の進行により海外投資家にとっての投資魅力も高まっている。東京都心では再開発プロジェクトも活発に進行しており、日本の不動産は依然として国際的に注目される投資対象となっている。
結論
日本国内では、企業による住宅手当の充実や単身世代の増加などを背景に、住宅購入のインセンティブが相対的に低下し、住宅所有率は低水準にとどまっている。しかしその一方で、活発な賃貸市場が形成されていることも大きな特徴である。
このような市場構造は、日本における安定した賃貸需要を支えており、中長期的な投資対象を求める投資家にとっては大きな魅力となっている。不動産の活用方法としても、収益物件としての運用、自用資産としての保有のいずれにおいても、日本の不動産は非常に優れた投資対象であるといえる。
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